※こちらの記事は、『レジスポ』の前身である『チットチャット・スポーツ塾 沖縄』の時代に作成したものです。そのため、インタビュー中に出てくる事業所の名称を当時のまま『チットチャット・スポーツ塾 沖縄(及び「チットチャット」)』として表記してあります。

今日のおしゃべり相手:つばさくん、つばさくんのお母さん

チットチャットの開設当初から通っている、つばさくんとお母さん。
通いはじめの頃からのつばさくんの変化を、お母さんにたくさん語っていただきました。

―― いま現在チットチャット・スポーツ塾 沖縄(以下チットチャット)に通っていますが、通いはじめてどれくらいの期間になりますか?
お母さん チットチャットがオープンした当初から通っているので、もう1年以上になります。
―― その前にどこか他のデイサービスを利用したりはしていましたか?
お母さん もともと、学習支援のデイサービスに通っていました。
でもいま現在は、その放課後等デイサービスはお休みしています。
―― どうして“スポーツ”の分野に興味をもったのでしょうか?
お母さん スポーツとの出会いという前に、まず、チットチャット代表の栄先生との出会いがありました。
沖国大で、グリーンホーム※1さんとはばたき※2さんの主催でSST教室をやっていたんですね。
そのときの指導者が栄先生でした。
そのときはまだチットチャットができる前で、そのSSTが衝撃的でした。運動指導でのつばさの変化というものが。
―― どのような変化が?
お母さん その頃のつばさが、「反抗性障がい」といった二次障がいが強く出ていて、学校で暴れて、否定とか怒りとか不安とかが凄く詰まっていた状態・時期でした。だいたい小学校二年生くらいの時期ですね。
そのときにSSTに出会って、1日でその怒りや不安がとれた。
全部一瞬で。
久しぶりに笑ったのを見ました。
こんなに楽しそうな笑顔が出るんだ、って、もう涙ものです。
―― SST教室自体は、どのような経緯で参加されたんですか?
お母さん つばさの同級生の保護者の方から紹介されて、通うようになりました。
行ってみたら、毎回10名前後の子が通っていましたね。
―― 具体的にそのときは、どのようなことをしたのですか?
お母さん 大学のなかということもあって、大学生ボランティアさんがたくさんいたんですね。
栄先生がボールなどを使った運動を指導していて、その活動のなかで、ボランティアさんたちがこの子を受け入れてくれた。
この子には乱暴なところもあったのですが、怒られることもなくそれも含めて受け入れてもらったところが、この子にとても良かったと思います。
それまで鬱積してたものが、全部発散できたのかな、って。
―― 1回の教室でどれくらいの時間行うんですか?
お母さん だいたい1時間半くらいかな。
―― それだけの時間で、表情も全部変わった?
お母さん もう、全部! それが最初の出会いですね。
その教室は月に2回なんですが、本人も私もすごく楽しみにしていて。
行く度に変化があるんです。友達との関わり方とか、人の話を聞けるようになったとか。
そこに通っているうちに、栄先生の方から「チットチャットをつくる」という話を聞いて、すぐ予約です!(笑)
―― SST教室と、チットチャットとの違いはありましたか?
お母さん 全く違いましたね。
SSTの場合はグループで活動する場合が多いのですが、ここは指導員と1対1という形式だったので、はじめは本人も戸惑っていたみたいで。
SST教室の場合は「遊んでもらえるところ」というイメージがあったのが、同じ栄先生の指導でも、ここでは決められたルールの中で活動をするというのが、2回目の指導くらいまで、本人は「?」って感じだったと思います。
ただ、嫌というわけではありませんでしたよ。楽しみにはしていました。
―― つばさくんが戸惑っているのを見て、お母さんの方には不安はありませんでしたか?
お母さん 特にないですね。
この子の場合は慣れるまで時間がかかる、っていうのはいつものことだったので。
―― チットチャットに通うことにした理由を挙げるとしたら?
お母さん 職員の方の、子どもに対する言葉掛けや、待つ姿勢という部分ですね。それはSST教室の時から。
怒らずに、「できる」というのを信じて対応してくれるところです。
チットチャットでは、子どもが活動する傍でその様子を見られるので、その言葉掛けや「できた!」という感動を一緒に体験したりして、一瞬で表情が変わるのがわかります。
1回の指導のなかで4つくらいの種目を行うので、だいたい1種目10~15分くらいの時間なんですけど、鉄棒の前廻りができなかったのが、できるんですよ、この間に! 本当にちょっとしたところから、手の握り方とかから。
できなかったら「じゃあこうやってみようか」って細かく刻んでやっていったら、できているんです!
必ずできる。ふしぎ。
跳び箱なんかも、はじめは上に乗るところからはじめて、終わり頃には、飛んでポーズまで取ったりして(笑)。
短い間で、成功というか「できた!」という体験をさせてくれるんです。
―― そんな短時間でそこまで。
お母さん 栄先生はもちろんベテランで経験もあってっていうのがわかるんですが、他にも指導員がたくさんいて、皆同じようなスキルがあり、同じような対応ができるんです。
それにはマニュアルとかもたくさんあるんでしょうけど、でも子ども個人個人によっても、またその日の子どもの状態とかも、そういう部分もしっかり見ながら、子どもに合わせて指導してくれるんです。
あと、記録がしっかり徹底されていて、「今日はこういうことをした」っていうのをちゃんと共有されているんです。
指導員は毎回変わるんですが、でもちゃんと同じように指導してもらえるので。たぶん研修とかもたくさんやってるんだろうな、と思います。
―― 子どもとの関わりとは別で、職員の保護者への関わり方などについてはどうですか?
お母さん 「いまは〇〇だから、こうしてるんだよ」みたいな、目的とか意味とか、そういう説明もしっかりやってくれます。
あと、計画表などを見ながら振り返りをしたりして、そのときに保護者の気持ちなども汲み取ってくれて、その子の生活全体のことを聞いてくれて、しっかり話し合うことができるのがいいですね。
―― 実際に通いだしてからこれまで、つばさくんの日々の変化などはどのように感じていますか?
お母さん もう1年以上通っているんですけど、まず自信がついた。
自己肯定感がすごく高まっているので、表情もすごく穏やかになりました。
以前は何かあるとすぐにグラグラって気持ちが揺れて怒ったりとかしていたんですけど、いまは、揺れなくなった。自分で保てるようになったんです。
環境の変化にも対応ができるようになりました。
あと、最近は暴言がなくなりました。
チットチャットでもこれまでは時折暴言を吐きながらも活動はするっていう状態だったんですけど、これが全くなくなったんです。
―― 今後、チットチャットへの要望や期待などはありますか?
お母さん はじめの頃は、活動や種目を子ども本人が選んでやっていたんですが、いまはくじ引きみたいにカードを引いて、その種目をやる、みたいな感じなんです。
それだとたまに、あまり好きじゃないものを引いてしまうこともあって。
自分で選べるのと、くじ引きと、両方あればいいなというふうに思います。
以前職員の方に、「気になるところはありますか?」などと聞かれて、そのときに感じたことを話したんです。
そうしたらすぐにその要望に応えてくれて、とても嬉しかったです。
そういう情報共有や情報交換を、いまでもやってはいるんですが、もっとしたいな、とも思います。私、おしゃべりが好きなので(笑)。
あとは、ほんとは毎週行きたい(笑)。いまは月に3回なので。
「今日はチットチャットの日♪」って、すごく楽しみにしているんです。
それから、チットチャット創設者の森嶋さんの本を読んだことで、やっていることの理解が深まったんです。なので、保護者の方はみんな読んでいるのかな、って気になって。
本だと少し抵抗がある方もいるかもしれないので、親への勉強会とか講演とかがあるといいな、と思います。
―― 今日はお忙しい中ありがとうございました。

このインタビューのあとお母さんは、アルバムを引っ張りだしてきて、つばさくんがチットチャットに通う前と後の写真を見せてくれました。
翼くんの表情の変化を、写真を見ながらとても嬉しそうに話してくれました。
お母さんのその表情がとても印象的でした。
※1 沖縄県障害児等療養支援事業 グリーンホーム
※2 沖縄LD児・者親の会 はばたき
取材日:2014年10月18日